家族限定や年齢条件による自動車保険の補償範囲について
自動車保険に加入するにあたって、支払うことになる保険料は誰もが安く抑えたいと思っているものです。基本的には補償内容を削ることで保険料が下がりますが、「とにかく安くしたい」というためだけで、外すべきではない補償まで外してしまうのは考えものです。
外したくない補償内容や特約はそのままで保険料を抑える方法として、運転者を限定する方法があります。主に「運転者(家族)限定特約」や「運転者年齢条件特約」という名称の特約がこれに当たります。
ここでは家族構成や使用する運転手の範囲を明確にして、どの範囲に設定すれば適切なのか、例も交えて考えておきましょう。
※ここで紹介する特約に関しては、保険会社によって、名称および詳細内容の異なる場合があります。
ご自身や家族のみが運転する方向けの「運転者(家族)限定特約」
契約車両を運転する人を本人のみや家族のみに限定することで、保険料を抑える(割引される)特約です。一般的には、保険契約申し込みの際に選択することになっている場合がほとんどです。
- ●運転者家族限定のタイプとしては、おおむね以下のような選択肢があります。
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- 契約者本人のみ(運転者本人限定特約)
- 契約者本人および配偶者のみ(運転者本人・配偶者限定特約)
- 契約者本人および同居の親族、別居している婚姻歴のない未婚の子(運転者家族限定特約)
「本人限定」にした場合は保険料が最も割引され、何も限定しない場合は通常の保険料となります。
(※保険会社により、「本人のみ限定」という選択がない場合もあります)
例えば、ご自宅に夫婦の二人暮らしであり、未婚の子どもが別居しているような場合で、子どもが帰省してきた時などに父(本人)の車を利用するようなことがある場合は、別居の未婚の子まで含まれる「運転者家族限定特約」にしておくと良いでしょう。もしその子どもがご自身で車を所有していて、父(本人)の車を利用する可能性がないのであれば、「本人および配偶者のみ」の限定にしておくことで保険料が割引されることになるでしょう。
さらに、妻が運転する可能性も全くない場合(免許を取得していないなど)は「本人のみ限定」で良いでしょう。
ただし、結婚した子どもが独立して別居している場合は、「家族限定」の範囲から外れることとなります。その子どもが帰省時に父の車を運転する可能性がある場合は、家族限定の特約を付けずに「限定なし」としておくのが好ましいでしょう。
家族以外の人が運転する場合でも条件を設定できる「運転者年齢限定特約」
契約車両を運転する人の年齢を限定することで、保険料を抑える(割引される)特約です。こちらも一般的には、保険契約申し込みの際に選択することになっている場合がほとんどです。
- ●年齢の範囲は保険会社により異なる場合もありますが、一般的には以下のような選択肢があります。
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- 年齢を問わず補償
- 21歳以上補償
- 26歳以上補償
- 30歳以上補償
年齢制限を高くすればするほど保険料が割引され、「年齢を問わず」にした場合は通常の保険料となります。
この年齢限定特約について注意しておきたい点は、「年齢条件の対象となるのは同居の親族のみ」ということです。
ご自身や家族、同乗者のための特約
ここまで2つの特約について、基本的なことを学んできました。
家族限定特約と年齢限定特約はセットで考えられることが一般的ですが、それぞれ正しく選択していたつもりでも、実際には補償されなかったというケースもありえます。
ここではひとつの例を参考にしていただき、契約者や家族の状況と各特約の選択状況により、誰が補償の対象となり誰が補償の対象とならないのか、さらにどのような選択にしておくのがより望ましいのか、考えてみましょう。
Aさん(50歳・男性)の場合
- ●家族構成
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妻(48歳)、長男(27歳)、長男の妻(26歳)との4人暮らし
次男(23歳)は結婚し、独立・別居中 - ●特約の選択内容
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- 運転者限定・・・家族限定
- 年齢限定・・・限定なし
Aさんは、子どもが免許を取得したことにより、年齢限定を「限定なし」にしていました。それでは保険料が高くなるからということで、運転者限定を「家族限定」にして、知人などには運転させないようにしました。その後、次男が結婚して別居することになりましたが問題ないと思い、特約の選択内容をそのままにしていました。
この場合の補償対象となる状況は以下のとおりです。
- ●補償対象状況
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妻・・・補償されます
長男・・・補償されます
長男の妻・・・補償されます
次男・・・補償されません
知人・・・年齢にかかわらず補償されません
たとえ「年齢限定なし」となっていた場合でも、「結婚により独立して別居」をしている次男の場合は「家族限定」の範囲外となってしまいます。これは「家族限定」による補償の対象範囲が、「同居の親族」または「別居の未婚の子」までとされているためです。
この次男が帰省した時にAさんの車を運転する可能性がある場合は、「家族限定」を「限定なし」にしておく必要があります。
(次男が個人の車を所有しているなどで、Aさんの車を運転する可能性がない場合は問題ありません)
しかしながらその場合は、運転者の限定による特約を全く付けられないことになるため、基本の保険料のままとなり、かなりの負担になることでしょう。
このような時は、以下のような選択にしておくことで、保険料を抑えつつ、次男も補償の対象とすることができます。
- ●特約の選択内容
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- 運転者限定・・・限定なし
- 年齢限定・・・26歳以上補償
- ●補償対象状況
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妻・・・補償されます
長男・・・補償されます
長男の妻・・・補償されます
次男・・・補償されます
知人・・・年齢にかかわらず補償されます
ここで気になるのは「26歳以上補償」なのに「23歳の次男」が補償の対象となる点ですが、問題ありません。
「年齢限定」の適用対象となるのは「同居の親族」となるため、「別居の子ども」つまり次男については、年齢限定の適用対象としては問われないからです。
これによりAさんは、できるだけ保険料を安く抑えたうえで、次男が運転するのはもちろん、知人が運転しても補償対象となるようにできました。
このように、家族、知人に関わらず、ご自身以外が運転する可能性のある場合に関しては、可能性として考え得る運転者をできる限り特定し、その人達がきちんと補償の対象となるよう最も適した運転者限定・年齢限定の条件を選択することで、支払う保険料をできる限り抑えながら、どなたが運転しても万一の時にきちんと補償をしてもらえるようにしておくことが大切です。