地震の被害だけは別
2011年、東日本大震災。それからわずか5年。2016年に起こった熊本地震。大きな地震が起こる度、考えさせられる「地震への備え」。地震は何の前触れもなく、私たちの日常を奪います。
しかし、地震の被害を受けても私たちの生活は、自力再建が基本とされています。火災保険で、落雷・風害・水害・土砂崩れなどの自然災害は補償の範囲とすることもできますが、地震は対象外です。
火災保険では、「地震の損害は補償されない」こと、ご存じでしたか?
地震保険は、公共性の高い保険
地震に対する経済的な備えとして、地震保険は有効な手段の一つです。
大きな地震が起きると被害額が莫大になることから、地震保険は国と民間の損害保険会社の共同運営によって成り立っています。保険金の支払責任の一部を再保険として政府が引き受けているため、地震保険は非常に公共性の高い保険といえます。
そのため、どの損害保険会社で加入しても、保障内容や保険料などはすべて同じになっています。
火災保険では、地震の損害は補償されない
地震保険はその名の通り、地震によって建物や家財が損害を受けたとき、その損害を補償するための保険です。具体的には「地震、噴火、またはこれらによる津波を原因とする火災、損壊、埋没、または流失による損害」です。
●保険金が支払われる主な場合
・地震が原因で火災が発生し、家が焼けてしまった
・地震が原因で家が倒壊してしまった
・地震が原因で津波が発生し、家が流されてしまった
●保険金が支払われない主な場合
・故意もしくは重大な過失または法令違反による損害
・地震などの際における紛失または盗難による損害
・戦争、内乱などによる損害
・地震などの発生日の翌日から起算して10日経過後に生じた損害
「うちは火災保険に入っているから大丈夫!」と思っていらっしゃる方も多いのですが、地震が原因で家が焼失しても火災保険では補償されません。ですから、地震による損害に備えるためには、「地震保険」が必要です。
地震保険は単独では加入できない
損害保険会社が販売する火災保険とセットで加入する必要がありますので、地震保険に加入するには、火災保険への加入が前提となります。
火災保険と共に販売することで、地震保険の普及促進を図っています。また、契約の維持管理にかかる費用を削減し、地震保険単独で販売するよりも経費を抑えて、可能な限り低い保険料で地震保険を提供するようにしています。(これは「地震保険に関する法律」(※)の趣旨に沿ったものと考えられます。)
(※)衆議院「地震保険に関する法律」
すでに火災保険に加入している場合には、火災保険の保険期間の途中から、地震保険に加入することも可能です。
火災保険を契約した人がどれだけ地震保険をセットしているかは、「地震保険の付帯率」でわかります。
2015年度の付帯率は全国平均で60.2%。火災保険を契約した半分以上の方が、地震保険にも加入しています。東日本大震災で被害の大きかった宮城県は86.2%。地震の備えへの意識の高さがはっきり見て取れます。全国的に見ても地震保険の加入率は年々伸びています。
1.日本損害保険協会「地震保険の都道府県別付帯率の推移(損害保険料率算出機構調べ)」をもとに作成
2.「付帯率」は、当該年度中に契約された火災保険契約(住宅物件)に地震保険契約が付帯されている割合。
対象は、建物と家財
火災保険と同様、地震保険の対象は建物とその中にある家財で、建物と家財は別々に加入します。
建物の地震保険は自宅用の住まいが対象なので、塀やガレージなどが被害を受けても保険金は支払われません。また店舗や事務所専用の建物、工場なども対象外となります。
保険金額は火災保険の30~50%です。2,000万円の契約なら最大で1,000万円が地震保険の補償額になります。ただし建物は5,000万円まで、家財は1,000万円までという上限が設けられています。
被災者の生活を支えるための保険
地震保険の保険金だけでは、必ずしも元通りの家を再建することはできません。
なぜなら、地震保険の保険金額は、火災保険の30~50%です。2,000万円の契約なら最大で1,000万円が地震保険の補償額になります。ただし建物は5,000万円まで、家財は1,000万円までという上限が設けられています。
例えば、建物を立て直す費用が2,000万円だとしたら、火災保険の契約金額も2,000万円にします。それに地震保険をセットした場合、地震保険の契約金額は最高で1,000万円となります。全壊でも1,000万円しか賄えないことになり、半壊なら500万円です。
ですから、建物を被災前の状態に立て直す目的としてではなく、巨大な経済ダメージを受けた時の「生活再建のための一時金」として位置付けるのが、地震保険の正しい使い方と言えます。住宅ローンの返済が始まり間もなく地震が起き、建物が倒壊すれば、新しい住まいを確保しなければならない一方で、倒壊した建物のローン返済は続きます。二重の住居費を払わなくてはなりません。勤務先も被災した場合、収入を得ることも難しくなるかもしれません。こうした状況で生活再建資金となる、まとまったお金を受け取れるのならば、たとえ建物を再建できないとしても、その後の状況は大きく変わるでしょう。
受け取れる保険金について
地震で被害を受けたら誰でも保険金を受け取れるわけではありません。
損害に応じて「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4つに区分されています。※2017年1月に3区分から4区分に細分化されました。
1.損害区分の細分化は、財務省「地震保険制度に関するプロジェクトチーム・フォローアップ会合」における議論(損害査定の迅速性を確保しつつ、より損害の実態に照らした損害区分とすることが望ましい)を踏まえて行われたものです。
2.時価とは、保険の対象と同等のものを再築または新たに購入するために必要な金額から、使用による消耗分を差し引いた金額をいいます。
まとめ
地震は止めることはできませんし、発生予測も不可能です。地震大国日本。いつ来るかわかりません。
「地震保険付帯率」(火災保険と一緒に地震保険にも加入している)は、毎年上昇し続けており、2015年では約60%でした(※)。
火災保険に加入する人のうち半数以上の方が、地震保険を付帯していることになります。
特に持ち家のローンの残高が多い人や、親族の家など転居することが難しい人などは、きちんと考えてみましょう。