建物の保険金額を決めましょう

建物の保険金額を決めましょう

火災保険などの損害保険は、発生した損害額を実費で補償します。契約時に設定する保険金額とは、その上限ということになります。保険金額を高く設定すると保険料も上がってしまうため、上限は高ければ高いほど良いというものではありません。ですから、適切にカバーできる金額に設定する必要があります。

建物の保険金額はどう決める?

火災保険を契約する上で、大切なポイントのひとつとなる「保険金額をいくらにするか」について解説していきます。「建物の価値」を保険金額にするのがルールですが、建物の価値って言われても困りますね。

火災保険上の建物の価値は、実際の不動産取引における市場価格とは異なる基準で算出されます。

  • 建物の構造
  • 延べ床面積
  • 築年数

などから個々に算出されるものなので、これらの情報を整えて損害保険会社や代理店に算出してもらいましょう。

「新価(再調達価格)」と「時価」

建物にかけるべき保険金額を、建物の価値を価格にしたものという意味で「保険価額」といいます。保険価額には「新価(再調達価額)」と「時価」という2つの基準があります。

●新価(再調達価額)

「今、その建物を新たに建てるとしたらいくらかかるか」という価格。

●時価

建物を建てた時にかかった金額から、現在までの経過年数に応じて消耗や経年劣化があったと考え、その価値を減らしたもの。

新たに契約を結ぶ場合、現在では新価をベースにすることが一般的になっていますが、10年以上前に長期で契約した火災保険は時価で契約されているものもあります。

新価(再調達価額)

新価は、「今、その建物を新たに建てるとしたらいくらかかるか」という価格なので、新価基準で契約すれば、失った建物と同等程度の建物を再建するために必要な費用や修理費が保険金として支払われます。

1998年の損害保険料自由化後に発売された各社独自の火災保険商品は、おおむね新価基準で契約されていると思います。また、銀行で長期火災保険の窓口販売が解禁されたのが2001年4月以降なので、それ以降にマイホームを取得し、銀行で火災保険を契約した場合も新価基準となっていると思います。
比較的近年マイホームを取得し、新規で火災保険を契約された方のほとんどは、新価基準で契約していると思います。

時価

建物は時間の経過とともに老朽化などによって、価値が下がっていきます。
時価は、同等のものを新たに建築あるいは購入するのに必要な金額から、「経過年数による価値の減少分(使用による消耗分)」を引いた額となります。

時価=新価-経年・使用による減価

つまり、現在の建物の価値といえます。そのため、家を売買する場合などは時価で取引されますが、火災保険の場合、経過年数が進んだ状態で全焼した場合、失った建物をもと通りにできるだけの保険金が支払われないということになります。

住宅ローンと一緒に契約した長期火災保険には注意

長期契約の場合、見直しの区切りがなく、どうしても長年ほったらかしにしてしまいがちです。時価契約の場合、時間が経てば経つほど設定している保険金額と時価との差が大きくなっていきます。過去のご契約で「時価額」で契約されている方は注意が必要です。

新価の計算方法

●新築注文住宅の場合

新価=「今、その建物を新たに建てるとしたらいくらかかるか」という金額なので、「実際に建築にかかった額(建築価額)」が新価となります。

●新築建売住宅の場合

建売住宅の場合は、土地代を含んで表記されているため、建築費がわからないこともあります。
確認方法は2つあります。

  1. 売主からの確認
  2. 消費税から逆算

1の場合は簡単ですが、売主から確認できなかった場合は、2となります。
これは、「土地の売買には消費税が課税されないが、建物の売買には消費税が課税される」ことを利用して確認します。
つまり、売買契約書に記載されている消費税から逆算すれば、建築費がわかるわけです。

(例)売買契約書に記載されている消費税額が100万円だった場合
100万円×108/8=1,350万円が消費税込みの建物価格となります。

●中古戸建住宅の場合

中古住宅の場合は、建築当時の建築費がわからない場合がよくあります。
仮に当時の建築費がわかったとして、そのままの金額を保険金額に設定しても、現在では物価も上がってしまっているため、同じ建物を建てるためには金額が不足してしまうこともあります。
ですから、中古の戸建ての場合には、保険独自の評価方法が2つ用意されています。

・年次別指数法
新築当時の建築費がわかっている場合、当時から現在までの物価の変動を考慮して、「もし、現時点で新築したらどのくらいかかるのか」を推定する方法

・新築費単価法
新築当時の建築費がわからない場合、構造と立地から建築費を推定する方法
「●●県に建つ、××構造の建物なら、1m²あたり○○円くらいで建築できるだろう」という要領で現在の建築費を推定します。

この2つの方法による計算は、保険会社または代理店が行います。

●マンションの場合

分譲マンションの分譲価額には、区分所有部分の建築費以外にも土地代(敷地利用権の価格)や共有部分の建築費が含まれるため、建築費がわかりにくくなっています。
ですから、マンションの場合にも、保険独自の評価方法が用意されており、所在地と延べ床面積から推定します。

・新築費単価表
「●●県のマンションであれば、1m²あたり○○万円」という要領で建築費を推定します。マンションの新価の算出は、保険会社または代理店が行います。

マンションの時に注意しなくてはならないのは、占有部分と共用部分の線引き(境界線)です。境界線の引き方は2種類あります。

上塗り基準

上塗り基準

壁は共有部分とみなし、上塗り部分とその内部だけを占有部分とする。

壁芯基準

壁芯基準

室内だけでなく、壁の中心線までが占有部分とする。

壁芯基準の方が面積は広くなるので、価額は高くなります。どちらの方式で計算するかは、そのマンションが占有部分をどう定義しているかによるので、マンション管理規約などで確認する必要があります。

まとめ

被害を受けた建物が元通りにできるだけのお金が受け取れる「新価」は、わかりやすい基準といえます。見直すタイミングが少なく、長期の契約をされている方は、「時価」になっていないかご確認ください。