所得補償保険の保険金を受け取れないケース
予期せぬ病気やケガなどによって、長期間働けなくなった時に役立つのが所得補償保険(就業不能保険)です。では、いかなる病気やケガでも補償の対象になるかというと、残念ながらそうではありません。いざ長期間仕事を休まなくてはならなくなった時、所得補償保険では保険金を受け取れないというケースにならないよう、所得補償保険の特徴をきちんと理解しておきましょう。
【目次】
「長期間働けない状態」とはどんな時?
まずは「長期間働けない状態」とはどんな場合があるのか、考えてみましょう。
労働者における「長期間働けない状態」となる主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 精神病(うつ病、統合失調症などのストレス性疾患)
- 3大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞)
- 交通事故やレジャー中などにおける不慮の事故
この中でも、近年増えているといわれているのが「精神病」によるものです。3大疾病や不慮の事故によるケガなども、決して少なくはありません。
いずれも、数日で回復するようなものは少なく、入院期間が終わってからも自宅療養が必要になるなど、結果的に「長期間働けない状態」になりやすい原因であるといえるでしょう。
要件により補償を受けられないケース
これから所得補償保険を検討するにあたり、まずは近年増えているという「精神病」について、気を付けなければならないことがあります。実は、所得補償保険や就業不能保険においては、「精神病による就業不能状態は補償(保障)の対象外」となっている商品が一般的です。つまり、「長期間働けない状態」になりやすい原因であるにも関わらず、実際には補償を受けられないという可能性が高いのです。
これにはさまざまな要因が考えられますが、精神病を患った方については「働けなくなる期間が長引く傾向にある」「回復(完治)したかどうかの見極めが難しい」などといった見られ方もあり、保険会社の判断においては補償(保障)の対象外としているケースが多いようです。
ただし、商品によっては「精神疾患やストレス性疾患でも補償(保障)の対象」となっているものもありますので、その内容をきちんと見比べておく必要があるでしょう。
免責期間により補償を受けられないケース
所得補償保険については、一定期間の就業不能状態においては保険金支払いの対象外となる「免責期間」が設けられています。短期タイプの所得補償保険で1週間程度、長期タイプの所得補償保険では60日、180日などと設定されています。
例えば、免責期間60日の所得補償保険に入っていたとして、不慮の事故で骨折をして動けなくなったとき、30日間入院したのちにそのまま職場復帰をした場合、この就業不能期間においては補償対象外となります。
免責期間の設定は商品や保険会社によりさまざまですが、短期間の治療・療養などによる就業不能状態の場合には、有給休暇や公的制度などにより充分な補償を受けられるだろうという考えが基になっているようです。
故意の事故や自然災害により補償を受けられないケース
当然ではありますが、契約者の故意または重大な過失、犯罪行為などの事故により、大ケガをしたといった場合などは、「免責事由」となり補償の対象外となります。
また、自然災害や紛争、戦争などが原因となるケガによる就業不能状態においても補償対象外となります。
生活費をカバーしてくれる役割をするのが所得補償保険
ここまで、補償を受けられないケースばかりを集めてきましたが、「じゃあ所得補償保険に入る価値はないの?」ということではありません。
大きなケガを負ったり、大きな病気を患ったりした時など、傷害保険や医療保険、がん保険などに加入していれば、それらのケガや病気に対する「治療費」としての保険金は受け取ることができます。
しかし、その治療や入院が長引けば、その働けない期間については収入がなくなることになります。一般的な会社員であれば有給休暇を利用できたり、傷病手当金などの公的制度による補償を受けられたりと、多少の穴埋めにはなるのですが、いつもどおりの給料のような金額を受け取れることにはなりにくいでしょう。
所得補償保険を検討する前に知っておきたい公的保障制度
もし、自営業や個人事業主の方であれば、その影響は顕著に表れるでしょう。
自営業や個人事業主の方が加入する国民健康保険においては傷病手当金がありません。さらに、ご自身が働けない間を休業とした場合、その期間の売り上げはなくなるということも考えられます。それだけでなく、長期間休業したことにより、いざ再開したとしても業績不振状態が続き、休業以前のような収入を得られなくなるというリスクも考え得るのです。
所得補償保険はどんな人に向いている?
いずれにせよ、治療を続ける間も、家族は生活をしなくてはなりません。もし自宅や車のローンなどが残っていれば、それを払い続けなくてはなりません。
そういった観点から、「長期療養中の生活費をカバーしてくれる保険」として、所得補償保険の加入も検討してみてはいかがでしょうか。