所得補償保険と収入保障保険の違い

所得補償保険と収入保障保険の違い

ここまで「所得補償保険(就業不能保険)」について考えてきましたが、保険業界には「収入保障保険」という名称の商品も存在します。この2つは名称こそ似ていますが、機能や目的が全く違ったものになっています。では、どのように違うのかを混同しないように整理して、ご自身のためにはどちらの保険が向いているのか、きちんと調べて検討しましょう。

ご自身が働けなくなった時、ご自身が補償を受けられる「所得補償保険」

基本的なしくみの時にも触れましたが、「所得補償保険(就業不能保険)」は、病気やケガなどで長期間働けず、収入を得ることができない状態になった場合に、その「収入を得ることができない」という損害に対して補償(保障)を受けることができる保険です。
所得補償保険(就業不能保険)の仕組み

医療保険に加入していれば、病気やケガによる「治療費や入院費」については保障を受けることができますが、その治療期間や、退院後の通院期間や自宅療養期間などに、「働いていたら得られるはずだった収入(所得)」については保障されません。

このように、「本人は生きているけれど働ける状態ではない」という時に、その期間の収入減を抑えることのできるのが、所得補償保険になります。逆に「本人が亡くなってしまった」という場合には、この保険による補償を受けることができません。

また所得補償保険には一般的に「免責期間」が定められています。短期・長期のタイプによりその期間は大きく異なりますが、例えば、長期タイプ(免責期間60日)の所得補償保険に加入していた場合、就業不能期間が10日程度といった場合には、この保険による補償を受けることができません。

ご自身が亡くなった時、家族が年金を受け取れる「収入保障保険」

「収入保障保険」は、死亡保障の一種であり、通常は「ご自身が亡くなった、または高度障害状態になった時に、保障を受けられる」のが収入保障保険になります。

一般的な死亡保険の場合、遺族が受け取ることになる何百万~何千万円といった保険金は、保険会社から「一括」で支払われるイメージですが、収入保障保険による保険金は、「年金」という形で毎月給付金を受け取れるのが特徴です。

例えば、夫が「保険期間:60歳まで」「年金月額15万円」という収入保障保険に加入していたとします。その夫が40歳で亡くなった場合に、受取人となっている妻や子が、夫が60歳になるはずだった20年後まで、年金として毎月15万円を受け取ることができます。
その、○○歳までという「保険期間」や、毎月○○万円という「年金月額」などについては、加入時に設定することになります。なお、所得補償保険のような免責期間はありません。

収入保障保険(例)

このように、「ご自身が亡くなった場合などに、受取人がその保険金を毎月年金として受け取ることができる」のが、収入保障保険の特徴になります。

逆に、「亡くなったり高度障害になったりはしてはいないけれど、長期間働けない状態」となった場合においては、収入保障保険はあくまで「死亡保障の一種」となりますので、保険金を受けることはできません。このような時の「収入減に対する備え」としては向いていないと考えられます。
※ただし、収入保障保険の商品によっては、所得補償保険に近い機能を持った商品もあります。

また、死亡保険金が固定になっている死亡保険と比較して、年金で受け取ることになる収入保障保険の場合、亡くなった年齢が遅いほど、受け取ることになる総額は減っていきます。そのため、収入保障保険は一般的な死亡保険に比べてお手頃な保険料で、死亡保障を持つことができますので、その点においては収入保障保険に加入するメリットのひとつといえるでしょう。

「所得補償保険」と「収入保障保険」の使い分け

「所得補償保険」と「収入保障保険」が全く違う商品であることは、おわかり頂けましたでしょうか?

改めてこの2種類の違いを簡単にまとめると・・・

●所得補償保険

ご自身が働けなくなった時のために、その期間の収入減に備える保険

●収入保障保険

ご自身が亡くなった時に備え、家族のために遺す保険

ということになります。

では実際に、ご自身にはどちらの保険が向いているのか、その使い分けについて考えてみましょう。

例えば、「自分はサラリーマンだから、働けなくなった時でも公的制度である程度はなんとかなりそうだけど、自分亡くなった時のために、家族に遺せるものが欲しい」といった場合には、収入保障保険を検討してみてはいかがでしょう。
やはり、収入保障保険は「死亡保障の一種」ですので、「死亡保障を必要とする人」が「死亡保険と比較して検討する」というのに向いている保険商品であるといえるでしょう。

逆に「自分は死亡保険に加入していて、何かがあった時でも、受取人である妻や子がその保険金で充分に生活を続けられる」と考えられる場合は、併せて収入保障保険に加入するメリットは少ないといえるでしょう。その場合は、所得補償保険に加入しておけば、「亡くなってはいないけれど、長期間働けない状態」となった場合の収入減に備えることができると考えられます。
特に「自分は自営業なので公的制度による補償が少なく、病気やケガで働けなくなったら、その間の収入はどうなるのだろう」という状況にも備えられるのが所得補償保険であると考えられます。

このように、それぞれの特長をきちんと理解して、今のご自身や家族、今後のご自身や家族のために向いていると思われる保険を検討するようにしましょう。