生活保障としての公的保障

生活保障としての公的保障

高齢化が進むわが国においては、これまでどおりの社会保障制度を維持していくのは難しくなってきていますが、それでも、健康保険や年金制度自体がなくなる可能性は、低いといえるのではないでしょうか。

現状の制度では、例えば一般の会社勤めのご主人が亡くなった場合、お子さまが高校を卒業するまで「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」を受け取ることができ、その後も「遺族厚生年金」は継続します。もちろん給付の条件や、それまでの収入によって金額の上下はありますが、一定の収入が確保できる点は、心強いのではないでしょうか。

ゆえに死亡保険を考える際は、こういった公的保障だけでは不足する分を補う視点で考えると無駄がありません。

そこで、まず公的保障の基本をおさえておきましょう。

どんな公的保障があるの?

主に4つの公的保障があります。

  • 遺族基礎年金
  • 遺族厚生年金
  • 中高齢寡婦加算
  • 経過的寡婦加算

まず、事例を用いて公的保障の基本を学んでください。
(例)世帯主の夫が亡くなったとき

遺族基礎年金

遺族基礎年金は、「子どもがいる配偶者」か「子ども」が受け取れる年金です。

●子どもの条件
  • 18歳になった年度の末日まで
  • 障害がある場合には20歳になった年の末日まで

支給されることになっています。

(例)遺族基礎年金が受け取れる人

●受給額

受給額は、779,300円+子の加算となります。

  • 子の加算
    第1子・第2子:各224,300円
    第3子以降:各74,800円

「子どもがいる配偶者」に支給される遺族基礎年金額
1.日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)2017」をもとに作成
2.2017年4月分から

「子ども」に支給される遺族基礎年金額
1.日本年金機構「遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)2017」をもとに作成
2.2017年4月分から

遺族厚生年金

夫が会社員であれば、厚生年金からの「遺族厚生年金」も受け取れます。
受給できる条件は以下のとおりです。

  1. 厚生年金加入者が在職中に亡くなったとき
  2. 勤務先を辞めるなどして厚生年金を止めた後に、厚生年金加入中に初診日があるケガや病気が原因で、初診日から5年以内に死亡したとき
  3. 老齢厚生年金の資格期間を満たした者が死亡したとき
  4. 1級・2級の障害厚生年金を受けられる者が死亡したとき

死亡した厚生年金加入者によって、生計を維持されていた遺族に対して支給されます。

●受給額

遺族厚生年金の受給金額は、遺族基礎年金のような「一律○○円」という単純なしくみではなく、死亡した厚生年金加入者の平均標準報酬月額によって異なります。
いくら受け取れるかは、「ねんきん定期便」から以下の計算式で概算額を算出できます。

ねんきん定期便見本
1.日本年金機構「平成29年度にお送りする「ねんきん定期便」」より

「これまでの加入実績に応じた老齢厚生年金額÷加入月数×300ヶ月(25年)×3/4」

●例:老齢厚生年金が40万円で20年加入していた場合の遺族厚生年金の年額は?

よって、1ヶ月あたりは31,250円(概算額)です。

中高齢寡婦加算

遺族基礎年金は、子どものいない妻には支給されませんし、子どもがいてもその子が18歳(18歳の誕生日の属する年度末まで)または20歳(1級・2級の障害の子)に達すれば支給されなくなりますが、夫が死亡したときに40歳以上で、子どものない妻(夫の死亡後40歳に達した当時、子どもがいた妻も含む)が受ける遺族厚生年金には、40歳から65歳になるまでの間、中高齢の寡婦加算(定額)が加算されます。妻が65歳になるとご自身の老齢基礎年金が受けられるため、中高齢の寡婦加算はなくなります。
平成28年度は年額585,100円になります。

遺族給付について
1.子の条件:18歳になった年度の末日までまたは障害がある場合には20歳になった年の末日まで

●中高齢寡婦加算が受給できる場合(1)

夫が死亡したとき、妻が40歳以上65歳未満で、遺族基礎年金の支給要件を満たす子どもがいない妻

●中高齢寡婦加算が受給できる場合(2)

40歳になったとき、子がいるため遺族基礎年金と遺族厚生年金が支給されている妻で、子どもが18歳の誕生日の属する年度末あるいは障害等級1級または2級で20歳に達し、遺族基礎年金が支給されなくなった妻

経過的寡婦加算

65歳になると中高齢寡婦加算の支給が終了し、老齢基礎年金が支給されます。
ところが生年月日によっては、老齢基礎年金の額が少なくなってしまう場合があります。そのため、経過的寡婦加算によって年金額が補てんされます。

中高齢寡婦加算の受給要件を満たす昭和31年4月4日以前に生まれた妻に対して支給されます。また、夫の死亡が65歳以降であったため、中高齢寡婦加算が支給されなかった妻にも経過的寡婦加算は支給されます。

ただし、遺族基礎年金の受給権がある場合(支給停止になっている場合を除く)経過的寡婦加算は支給停止となります。