医療保険は本当に必要?
日本国内の65.7%が加入している医療保険(※)。本当に必要なのでしょうか?
結論からいうと、
「貯蓄で備えられる人」
「長期入院への保障は考えなくていい人」は医療保険への加入は必要ないと言えます。
「入院した際には莫大な医療費の負担が必要なのではないか?」と考える方が多いかもしれません。
しかし日本には、大きな病気をした際に、国民の医療費負担を軽減する制度があります。その制度を使えば、医療費の負担を軽減することが可能なのです。
それらの制度を用いたうえでかかる費用や、収入の減少に備えるのが、医療保険の役割となってきます。
このページでは、実際の医療費の自己負担額や収入の減少の程度などをまとめ、医療保険の必要性について、解説していきます。
国内の充実した健康保障制度
日本の場合、国の制度により医療費の多くがカバーされます。実際に自己負担でかかる費用は、どれ程になるのでしょうか。まず、国の制度を利用した場合の自己負担額について解説いたします。
- ●高額療養費制度
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国の制度のうち、医療費の負担を軽減するうえで特に重要なのが「高額療養費制度」です。
高額療養費制度とは、毎月の医療費の自己負担額が高額になった場合には、一定額(自己負担限度額)を超えた部分の金額を払い戻してくれる制度です。自己負担限度額は、収入によって異なります。
資料:厚生労働省 「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から)」をもとに作成
(*1)ここでいう「年間所得」とは、前年の総所得金額及び山林所得金額並びに株式・長期(短期)譲渡所得金額等の合計額から基礎控除(33万円)を控除した額(ただし、雑損失の繰越控除額は控除しない)のことを指します。(いわゆる「旧ただし書所得」)
(*2)高額療養費を申請される月以前の直近12か月の間に高額療養費の支給を受けた月が3か月以上ある場合は、4か月目から「多数該当」という扱いになり、自己負担限度額が軽減されます。 - ●傷病手当金
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また、病気やけがなどで働けなくなってしまった場合には、収入を一部保障する「傷病手当金」という制度があります。働くことができなくなって4日目から1年半の間は、毎月月収の2/3が支給されます。
この制度により、働けなくなった場合にも一定の収入を得ることができます。
※但し、国民健康保険加入者は対象外ですので、自営業の方は受け取ることができません。
健康保障制度ではまかなえない費用
入院給付金の支払われる生命保険に加入している人の、入院給付金の平均金額は8,700円でした。
男女別にみると、男性の平均金額は9,600円、女性の平均金額は8,100円となっています。
- ●差額ベッド代
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入院費用の中には「差額ベッド代」というものがあります。希望して個室等に入院された場合、基本的に1~4人部屋に入室されたときにかかる費用で、正式には「特別療養環境室料」と言い、健康保険の適応外、つまり高額療養費制度の対象外となる費用です。
個室や少人数の病室など、治療には必ずしも必要ではないが、本人が希望して入る場合にかかる費用です。(病院の都合により個室等に入院した場合には、料金は請求されません)差額ベッド代は、病院や何人部屋かによって金額は異なりますが、厚生労働省調べによる、令和4年7月1日現在における差額ベッド代の平均の日額は6,620円です(※)。
(※)厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第548回)『主な選定療養に係る報告状況』」より差額ベッド代は必要不可欠な費用ではありませんが、「個室等しか空いていなければ他の病院を探さなければならない」などの理由で、負担せざるを得ない状況になる場合もあるため、注意が必要です。
- ●先進医療の医療費
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「先進医療」とは、大学病院などの高度な医療機関で研究・開発されてきた最新医療技術で、安全性と治療効果はある程度認められていますが、健康保険の対象とするかどうかはまだ検討中の厚生労働大臣が認めた医療技術です。
健康保険の適用外になるため、高額療養費制度は対象外となり、治療費は高額になる場合があります。
がん治療などで注目されている先進医療の「陽子線治療」を受けた場合には、自己負担額の平均は約265万円(※)です。
※厚生労働省 第127回先進医療会議「【先進医療A】令和5年6月30日時点における先進医療に係る費用 令和5年度実績報告(令和4年7月1日~令和5年6月30日)」をもとに算出
※「先進医療」とは、厚生労働大臣が認める医療技術で、医療技術ごとに適応症(対象となる疾患・症状等)および実施する医療機関が限定されています。また、厚生労働大臣が認める医療技術・適応症・実施する医療機関は随時見直されます。 - ●家族の収入減
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例えば共働きのご夫婦で、旦那さんが入院し、奥さんが面倒を見ることになった場合、奥さんが仕事を減らす、または辞めるなどした場合に減る収入は、傷病手当金の対象外ですので、収入が減った分がそのまま負担となります。
- ●国民健康保険加入者の方は傷病手当金の対象外
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前述しましたが、国民健康保険加入者の方は、傷病手当金の対象外となってしまいます。
自営業やフリーランスの方は、働けない期間中の収入がなくなってしまうことになります。
長期入院の可能性と備える保障
では、実際病気になったときには、どれくらいの期間の入院が必要になるのでしょうか?
かかる病気や重さによっても異なりますが、病気で入院する方の全体の平均は「32.3日」になっています。
厚生労働省「令和2年 患者調査」より
つまり、ほとんどの場合には、約1ヶ月で退院できるということになります。
1ヶ月程度の入院であれば、貯蓄などで十分まかなえるとは思います。
可能性は低いとはいえ、長期入院に備えるかどうかが、医療保険に加入するかどうかの判断で重要になってきます。
まとめ
病気にかかって入院した場合、私たちは国の制度により負担を軽減できます。
1ヶ月程度の短期間の入院だけに備えるのであれば、貯蓄などで十分であり、医療保険に加入する必要はないかもしれません。
しかし可能性が低いとはいえ、長期入院した場合の費用は非常に大きなものです。この長期入院に備えておくかどうかが、医療保険に加入するかどうかのひとつの選択の基準になるのではないでしょうか。
また、自営業やフリーランスなどの国民健康保険加入者の方は、傷病手当金の対象外となるため、入院した際の収入がなくなってしまいます。そのため、会社員の方よりも医療保険の必要性が高いといえます。
AFH283-2024-0017 3月5日(260305)