退職後の生活が心配。年金っていくらくらい受け取れるの?
厚生労働省の平成27年簡易生命表によると、日本人の平均寿命は男性が80.79歳、女性が87.05歳。日本はまさに世界有数の長寿国です。
多くの方は、定年退職後は給与収入がなくなり、年金をベースにした生活になります。60歳で定年退職する方なら、平均寿命まで20年以上にもおよびます。決して短くはない老後をどのように暮らしていくか、経済面で不安を感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
数十年後、年金がいくらもらえるのかはわかりませんが、「いま年金をもらっている人たちの平均額」はわかりますので、目安として一緒にみていきましょう。
老後の暮らしについて不安な人は約83%
金融広報中央委員会が2016年に2人以上の世帯を対象としておこなった、「家計の金融行動に関する世論調査」によると、老後の暮らしについて「心配である」と回答した世帯は83.4%でした。老後をどのように暮らしていくか、多くの方が経済面の不安を感じていることがわかります。
1.金融広報中央委員会「2016年 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査]」をもとに作成
心配に感じている理由は以下のとおりです。
- 十分な金融資産がないから。
- 退職一時金が十分ではないから。
- 年金(公的年金、企業年金、個人年金)や保険が十分ではないから。
- 生活の見通しが立たないほど物価が上昇することがあり得ると考えられるから。
- 現在の生活にゆとりがなく、老後に備えて準備(貯蓄など)していないから。
- 再就職などにより収入が得られる見込みがないから。
- 家賃の上昇により生活が苦しくなると見込まれるから。
- マイホームを取得できる見込みがないから。
- こどもなどからの援助が期待できないから。
- その他
このことから、「老後までに取り崩せる十分な貯蓄ができない」「収支が赤字になる」といったことに不安を感じていらっしゃる方が多いことがわかります。
必要な老後資金は1億円以上!これって本当?
テレビや雑誌などで「老後の生活には1億円必要!」や「数千万円必要!」などと書いてあるのを、目にしたことはありませんか?「こんなに準備できない!」と不安に感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
この「1億円」や「数千万円」すべてを、預貯金で準備しなければならないと勘違いしがちですが、その必要はありません。
定年後は給与収入などがなくなり、年金をベースにした生活になります。ざっくりお伝えすると、「実際にかかる生活費」と「もらえるであろう年金額」との差が、不足する金額になります。この不足分を補うために備えるのが「老後資金」です。
また、この1億円は「実際にかかる生活費」が「ゆとりある生活を送るための生活費」である可能性もあるため、どのような条件で書かれているのか、きちんと確認しましょう。数字だけみてしまうと、不安しか残らなくなってしまいます。
とはいえ、年金だけでは生活できない。と感じている方がほとんどかと思います。既に厚生年金が受け取れる年齢が60歳から65歳に引き上げられていますし、将来的には、年金の受給額が減っていくことも予想できます。そしてまた、いつ制度改正になるかもわからない状況だといえます。
「老後なんてまだまだ先。」「今は子どもたちの教育費でそれどころではない。」といった気持ちもあるかもしれませんが、老後の準備は少しでも早いに越したことはありません。今すぐは難しいかもしれませんが、まずは知ることから。
それでは、気になる年金額についてみていきましょう。
年金ってどれくらい受け取れるの?
毎月国民年金や厚生年金の保険料を払っているけど、一体どれくらいもらえるのでしょうか?現在30代・40代の方が数十年後に、どれくらい年金を受給できるのかは残念ながらわかりませんが、現在年金を受給している人たちは、どれくらいの年金を受給できるのか、モデルケースをみてみましょう。
ちなみに年金の年金額は、前年の物価や賃金の変動率に応じて、その年ごとに改定されます。物価が上がれば年金額も上がり、物価が下がれば年金額も下がります。
1.厚生労働省「平成29年度の年金額改定について」をもとに作成
2.厚生年金は、夫が平均的収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)42.8万円)で40年間就業し、妻がその期間すべて専業主婦であった世帯が年金を受け取り始める場合の給付水準です。
- ●国民年金
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満額の約6.5万円を受け取れるのは、40年間(480ヶ月)保険料を納付した人です。
満額でも年金のみでゆとりある生活を送るのは極めて厳しそうです。
※年金額は、平成29年度価格国民年金は、「納付した期間」によって受け取れる年金額が変わりますので、例えば、30年間(360ヶ月)納付した人の場合は、その分受け取れる金額も減ります。
尚、年金を受け取るには、原則として25年以上の加入期間(受給資格期間)が必要でしたが、平成29年8月から、加入期間が25年から10年に短縮され、25年に満たないため年金を受け取れなかった人の中に、10年に短縮されることで、年金を受給できるようになる可能性があります。
- ●厚生年金
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上記の表の約22万円という金額は、夫が平均標準報酬(賞与含む月額換算)42.8万円で40年間就業し、妻がその期間すべて専業主婦であった世帯が年金を受け取り始める場合の給付水準です。
たまには夫婦で旅行に出かけたり、年金のみでゆとりある生活を送るのはやはり厳しそうです。
※年金額は、平成29年度価格また、厚生年金は、「加入期間」と「給与の額」によって受取額が変わりますので、個人差が大きくなります。
今受給している人は、どれくらい受け取っているの?
先ほどはモデルケースの金額でしたが、次は現在年金を受け取っている方の平均額をみてみましょう。
厚生労働省「平成27年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より
- 国民年金 平均月額 5.5万円
- 厚生年金 平均月額 14.8万円
- 男性の平均月額:16.6万円
- 女性の平均月額:10.2万円
前述のモデルケースよりも金額が低いことがわかります。
特に厚生年金は「加入期間」だけでなく、「給与の額」によって受取額が変わるため、男女で平均額が大きく異なります。
下の図は、厚生年金受給権者の男女別、階級別年金月額です。男性では18万円~20万円受け取っている方が一番多く、女性では8万円~10万円受け取っている方が多いことがわかります。
1.厚生労働省 「平成27年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとに作成
2.新法老齢厚生年金については、旧法の老齢年金に相当するものを「老齢年金」としている。新法退職共済年金についても同様。
3.平均年金月額には、基礎年金月額を含む。
「老後資金」をどれくらい準備すればよいのか、それは受け取れる年金額によっても変わりますが、それ以外にも、「どのような老後生活を送りたいと考えているか」によって大きく違います。
例えば、「年に1度は海外旅行に行きたいと考えている夫婦」と「老後はのんびり趣味を楽しみたいと考えている夫婦」では生活費が大きく違うからです。
- ●夫婦2人で老後生活を送る上で、必要と考えられている生活費
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- 最低日常生活費 平均22万円(月額)
- ゆとりある老後生活費 平均34.9万円(月額)
子育て真っ只中の世帯の場合など、今すぐ老後資金の準備をするのは難しいかとは思いますが、思い立ったときに情報収集からはじめるなど、できることから自助努力による老後のための資金計画を立てていくことが大切です。
ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談したり、無料のマネーセミナーに参加してみたり、上手に利用しながら考えていくのも良いかもしれません。
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