がん検診とは | メリット・デメリット・検診の流れ・種類など

現在の日本は、世界に類を見ない「長寿国」ではありますが、「国民の2人に1人が『がん』になり、3人に1人が『がん』で亡くなる」といわれるほど、がん患者さんの多い国、がんによる死亡者が多い国でもあります。

がんがまだ小さなうちに発見し、適切な治療を受けることができれば、完治が望めるものもあります。そのために必要なのが、定期的な「がん検診」なのです。

がん検診とは

がん検診とは、「健康増進法」という法律により、保険者や事業主が任意で実施すること、と定められています。ここでいう「保険者」とは、国民健康保険に加入している方は地方自治体、企業などにお勤めで健康保険に加入している方は健康保険組合が該当します。事業主とは、勤務先のことです。

現在の日本は、「国民の2人に1人が『がん』になり、3人に1人が『がん』で亡くなる」といわれています。がんは、その種類や、がんが発見された時の状況によっては、生存率が低くなってしまうものがあります。しかし、早期に発見し、早い時期から適切な治療を行うと、完治が望めるものもあります。そのため、がんを早期に発見し、適切な治療を受けるよう導いていくことを目的として、「がん検診」があります。

日本人の主な死亡原因は、がん、心疾患、脳血管疾患です。特に1980年代以降、がんによる死亡者は増加の一途をたどっています。最近になって、肺炎や老衰など、高齢になることで起こり得る死因が増えていますが、それでも、「がんによる死亡者」は、2位の心疾患(高血圧を除く)による死亡者数を、大きく引き離しています。厚生労働省が公表している「平成29年(2017)人口動態統計(確定数)の概況」によると、2017年にがんで亡くなった方は373,334人でした。2位の心疾患で亡くなった方は204,837人でしたので、およそ1.8倍であることがわかります。なお、2016年にがんで亡くなった方は372,986人でしたので、がんによる死亡者は若干ですが増加傾向が続いています。

死因順位(第10位まで)別 死亡数・死亡総数に占める割合
1.厚生労働省 「平成29年度 人口動態統計(確定数)の概況」をもとに作成
2.死因分類は「ICD-10(2013年版)」(平成29年適用)によるものである
3.「心疾患」は「心疾患(高血圧性を除く)」、「血管性等の認知症」は「血管性及び詳細不明の認知症」である。

この傾向は、1980年代頃から始まりました。高度経済成長期にあった日本では、がんで亡くなる人が急増し、それまでの死亡原因の第2位と第1位だった、心疾患と脳血管疾患を抜いたのが、1980年代の初めです。当時は、「がんになる人」は今よりも少なく、「がんで亡くなる人」も少なかったのですが、「がんになって、がんで亡くなる割合」は、今よりもずっと高かったようです。

このような背景があり、2002年に健康増進法という法律が制定されました。その中では、生活習慣病とともに、がんに対しても、早期発見・早期治療を目的とした「健康診査」を行うことが示されています。これにより、地方自治体や健康保険組合は、年に1回以上の健康診断とともに、がん検診も行うことになりました。

●がん検診の目的と基本条件

がん検診の目的は、がんを早期に発見し、適切な治療を行うことで、がんによる死亡数を減らすことにあります。「多くのがんを見つける」だけではなく、その後の「適切な治療」につなげるためのものです。

がん検診には、7つの基本条件があります。

  1. がんになる人が多く、また死亡の重大な原因であること
  2. がん検診を行うことで、そのがんによる死亡が確実に減少すること
  3. がん検診を行う検査方法があること
  4. 検査が安全であること
  5. 検査の精度がある程度高いこと
  6. 発見されたがんについて治療法があること
  7. 総合的にみて、検診を受けるメリットがデメリットを上回ること

こうした条件を満たすものとして、各地方自治体や健康保険組合が主体となって、現在は5つのがん検診が行われています。

●健診と検診

ところで、健康診断は「健診」と表記しますが、がん検診は「検診」です。この違いは、検査や診断をする目的の違いにあります。
健康診断は、「健康であることを確認(診断)する」ために行われるものです。健康上の問題がなく、社会生活が正常に行えるか、学校生活がみなと同じように正常に行えるかどうかを判断します。企業における雇入時の健康診断や、学校における学校健診がこれに該当します。
一方の「検診」は、特定の病気になっていないかどうか、もし特定の病気があるなら早期の治療へとつなげていくことを目的としています。がん検診や骨粗しょう症検診などがこれに該当します。

がん検診のメリット・デメリット

がん検診のメリット・デメリット

●がん検診のメリット

がん検診を受けた人にとって、早期発見から早期治療がスタートでき、「完治した」あるいは「長生きできた」ことが確認できれば、大きなメリットとなります。

がん治療の結果としてどれだけ長く生きていけるかを示す数値として、「生存率」というものがあります。がんの発見、最初の治療から、およそ5年後にも生存しているかどうか、10年後はどうかなどを判断するために、「5年生存率」や「10年生存率」という統計データがあります。
これによると、例えばがん検診の対象である「胃がん」は、発見された時の病期(ステージ)によって、その生存率が大きく変わります。

胃がん

  • 発見時がⅠ期だった場合:96.7%
  • 発見時がⅡ期だった場合:64.1%
  • 発見時がⅢ期だった場合:47.0%
  • 発見時がⅣ期だった場合:7.0%

全症例を合わせると、73.4%というデータがあります。

つまり、早期である「Ⅰ期」で胃がんが発見され、適切な治療を受けると、95%以上の人がその後の5年間は生存していることになります。しかし発見時がかなり進行したⅣ期だった場合、適切な治療を受けることができるかどうかがわかりません。「治療ができないほどに進行した状態」もあるからです。この場合、仮に適切な治療を受けることができたとしても、5年後まで生存できる確率は7%です。胃がん全体を合わせると73.4%ですから、10人中2.5人、およそ4人に1人は、発見されてから5年以内に亡くなることになります。

このように「もう少し早く見つかっていれば……」という状況を回避するために、がん検診を受けて早期に発見し、早期治療を開始することが推奨されています。

また、がんには「前がん状態」と呼ばれる細胞の変化の時期があります。例えば子宮がんなどは、「異型上皮(異型成)」と呼ばれる、正常とは言い難いががんではないという細胞の状態があります。この時点で「異型上皮(異形成)」の部分を切除し、正常な細胞のみが残るような治療を行えば、がんへの進行を予防することができます。

さらに、がん検診で「異常なし」と判断されると、安心できる人は多いでしょう。近年はさまざまな情報を簡単に入手することができるため、性別や年齢により「もしかすると……」と不安になっている人もいらっしゃるかもしれません。しかし、がん検診の結果で異常がないことがわかれば、安心して日常生活を送れるようになります。これも、がん検診のメリットといえるのではないでしょうか。

●がん検診のデメリット

一方、がん検診にも、いくつかのデメリットがあります。偽陰性、偽陽性、過剰診断と呼ばれる状態です。
偽陰性とは、本当はがんがある状態なのに、検査の結果によって「陰性=がんがない」と判断されることです。
偽陽性とは、逆に、本当はがんがない状態なのに、検査の結果によって「陽性=がんがある」と判断されることです。
これは、「検査の精度は100%ではない」ことから生じるデメリットです。

偽陰性については、がんができてから発見されるまでの期間が関係しています。がんは、何らかの原因により、正常な細胞が異常な細胞となってしまうことで作られます。この細胞が一つだけなら、自分自身の免疫機能などにより、排除されてしまうかもしれません。しかし細胞は一定の期間が過ぎると死滅しますが、その代わりに、細胞分裂により新しい細胞が生まれます。この時に、異常な細胞がコピーされていくことで、異常な形状や働きを持つ細胞が増えていきます。これが一定の大きさになると、がんとして発見されることになります。しかし、異常細胞の数が少なく、「がん」という形で発見される前の段階では、がん検診の検査でも、がんを見つけることができません。また、「見つけにくい位置」というのもあり、ここに小さながんがあっても、検査では見つけらないこともあります。これが偽陽性となるしくみです。

逆に偽陽性については、検査の精度と細胞の異常度や大きさが関係しています。がんができるしくみは上記の通りですが、がん検診のさまざまな検査により、人体には悪い影響は及ぼさない細胞を「がんかもしれない」と判断してしまうことがあります。がん検診で「がんの可能性」が指摘されると、その後は精密検査でより詳しく調べることになりますが、精密検査でもがんが見つからないことがあります。これが偽陽性となるしくみです。
なお、「本来は生命の状態に影響をおよぼさない、ごく小さくて、その後も進行がんにはならないであろうがん」を見つけることを、「過剰診断」といいます。

また、偽陽性や過剰診断により、「自分はがんかもしれない」と悩む人は多いでしょう。さらに、精密検査を受けることで、何らかの偶発症(例えば、胃カメラによる出血や穿孔など)が起こる可能性もゼロではありません。このような、心理的な影響や、本来は不要であった精密検査による偶発症なども、がん検診のデメリットといえるかもしれません。

がん検診の流れ

がん検診は、「健康診断のオプションで受ける検査」だけを表すのではありません。検診を受けたのち、異常ありという結果から精密検査を受け、その結果として「がんがある」「がんがない」と判断されるまでの過程を含めて「がん検診」です。

●がん検診を受ける年齢と頻度

がん検診はそれぞれ、何歳以上がどのくらいの間隔で受けるべきかが決まっています。

指針で定めるがん検診の内容
*1.ただし一部検査は40歳以上から
*2.ただし、一部検査は1年に1回

これは、それぞれのがんに対して、長年に渡って調査や統計を行った結果で導き出されています。がん細胞には、できる部位(胃や肺など)によって、特徴があります。例えば、がんができる原因や、がん細胞が大きくなる早さ、見つけやすさや見つけにくさなどです。また、それぞれのがんになる人が、増えてくる年代も違います。多くのがんは、40歳以上の年代で増えはじめ、50歳代、60歳代など年齢が上がるほど、がんになる人が増える傾向があります。しかし、子宮がんだけは、20歳以上です。子宮がんになる人は、20歳代から増え始めるためです。

●精密検査

この年代、あるいはがん検診を受ける時期になると、健康保険組合などから受診案内が送られてきます。まずはこの受診案内に従って、最初の検査を受けます。これが一般的に「がん検診」と呼ばれている検診です。

その結果、「陽性=がんがある可能性がある」と判断されたら、次は精密検査を受けます。その結果によって、次の行動が変わってきます。

  • がんがある場合 → 適切な治療を受けます
  • がんがない、あるいは良性の病変の場合 → 次回の「がん検診」を受けます

この「次回の検診」が、上記のとおり、がん検診の種類によって決まっています。
1回のがん検診で「異常なし」だった場合も、次回のがん検診は受けるようにしましょう。前回のがん検診で「異常なし」という判断だったとしても、その時には見つからなかったごく小さながんが、1年(あるいは2年)のうちに、確実ながんになっている可能性があります。これを早期に発見し、早期治療へつなげるために、定期的ながん検診が必要なのです。

がん検診の流れ

がん検診の対象となる臓器の種類

●胃がん検診

胃がん検診は、40歳(50歳)以上の男女ともに、受けることが推奨されています。胃がん検診で行う検査はいくつかありますが、かつては「胃部エックス線写真」という検査が主に行われていました。バリウムと呼ばれる造影剤を飲み、エックス線写真を撮影する台の上に横になり、台ごと左右や上下に動かし、バリウムを胃の隅々まで行きわたらせながら、数枚のエックス線写真を撮影する検査です。2014年から「胃内視鏡検査」が加わりました。この2つの検査は、どちらかを選択して受けることができます。

●子宮がん検診

子宮がん検診は、20歳以上の女性のみが対象となります。子宮がん検診には、子宮体がん検診と子宮頸がん検診があります。現在のところ、「子宮がん検診」といえば「子宮頸がん検診」を指しますが、これは30歳代~40歳代に患者さんが多いため、20歳以上からの定期的な検診が必要とされています。子宮体がんは50歳以上で患者さんが増え、閉経後の女性に多いという特徴があります。

●肺がん検診

肺がん検診は、40歳以上の男女が対象です。肺がんの一番の予防策は禁煙です。肺がん検診は大きく2つ、「胸部エックス線写真」と「喀痰(かくたん)細胞診検査」があります。喫煙者の場合は、まず「喀痰細胞診検査」を受けることが多いのではないでしょうか。これと併せて「胸部エックス線写真」の検査を受けることで、肺がんの発見率が高くなるといわれています。

●乳がん検診

乳がん検診は、40歳以上の女性のみが対象です。一般的に「マンモグラフィー」と呼ばれる、乳房だけのエックス線写真撮影の検査を行います。

乳がん検診について

●大腸がん検診

大腸がん検診は、40歳以上の男女が対象です。いわゆる「検便」を行います。これにより、便の中にがん細胞がある(もしくはその可能性がある)と判断されると、大腸内視鏡検査などの精密検査が必要となります。

がん検診を受けるには?

がん検診には、大きく2つあります。自治体が実施する「対策型がん検診」と、職域や人間ドッグなどで受ける「任意型がん検診」です。

●対策型がん検診

「対策型がん検診」は、5つのがんの死亡率を下げることを目的とし、公共の政策として行われます。そのがんの「死亡率を下げること」が明確となっている検査方法で実施されます。がん検診を受けるべきタイミングで、お住まいの自治体からの案内や受診票が届きますので、その指示に従い、検診の受診日を予約します。予約日には、必要事項を記入した受診票を持参し、指定の検査機関を受診します。この時、例えば大腸がん検診の場合は、予め検便容器が送られてくることがありますので、忘れずに必要なものを持参しましょう。ただし、場合によってはがん検診の案内などが送られず、自分で情報を集めないといけないこともあります。まずは、お住まいの自治体の検診窓口などのウェブページを見て、がん検診のお知らせなどがないかを確認しましょう。見つからない場合は、自治体の窓口に問い合わせてみましょう。

●任意型がん検診

「任意型がん検診」は、対策型がん検診以外が条件となっており、例えば職域で行う健康診断のオプションとして選択できたり、人間ドックなどで複数の検査を組み合わせて行われます。勤務先の事業所が加入している健康保険組合などから、がん検診の案内と受診票が届きます。健康診断の申し込みと一緒に、がん検診も申し込んでおくと良いでしょう。受診当日は「対策型がん検診」と同様、必要なものを持参して検査機関を受診します。

●がん検診の費用

がん検診の費用については、お住まいの自治体や、加入している健康保険組合などによって変わります。多くの場合は、数千円程度ですが、無料クーポンなどを発行している自治体もあります。特に乳がん、子宮がん、大腸がんに対しては、2009年より厚生労働省が無料クーポンを配布しています。お手元に届いたことがきっかけで、がん検診を受診した方もいらっしゃるのではないでしょうか。なお、無料クーポンが使える日時などは、お住まいの自治体や実際の検査機関により異なりますので、詳しくはお住まいの自治体の窓口に問い合わせてみましょう。

職域の健康診断のオプションとして受ける場合は、受けられる年齢や受診可能な検査機関が決まっています。費用は数千円程度ですが、場合によっては無料で受けられることもあります。
人間ドックとして受ける場合は、基本的には自費となりますが、他の検査と併せての費用が決まっているようです。

まとめ

がん検診は、いくつかのデメリットはありますが、現在行われている5つのがん検診は、全国的な統計データ等を元に、「この検査ならば高い確率でがんを見つけ、死亡率を下げる」ことが確立されているものです。年齢や性別によって検診を受ける頻度が違いますし、検査の内容はがんの種類によっても違います。いずれの場合も、まだ自覚症状がないうちに受けることで、「がんがない」という安心感につなげていきましょう。

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